砂海亭の2階で落ち着いていた皆のところに
モブの指名手配書を持ったヴァンが駆け上がってくる。
「次の討伐!これにしようぜ!!」
机の上に置かれたそれを見て一様に眉を顰めた
「やめとけって」
「手間がかかりそうだわ」
「危険じゃないかしら」
「変わったモンスターね」
「だってこれAランクだよ?」
「考え直したほうがよさそうだな」
「なんとかなるって。それにさ、もう登録したし」
「「「「「おい」」」」」
そこにいた全員の声が重なった―
misunderstanding
相手はAランクのモブ。ラバナスタではなくヴァン達と一緒に討伐場所であるガリフの里に行く事となった。
バルフレアとフランは「狭い洞窟での飛び道具はかえって危険だな」そう言って里に待機していた。
もちろんも一緒に、皆の帰りを待つ事となった。
「やる事無いかしら」
「たまにはのんびりするのも悪くない」
「皆にはあったほうが良いけど。ねぇ、そういえばフランは?」
「外だろ」
「テントにいるのは私とバルフレアだけだもの確かにそうだけど」
「俺は束縛しないタイプなんでね」
「はいはい」
それにしても皆が討伐に出発してからかれこれ数時間は経とうとしている。
バルフレアとの会話も楽しいが頭の中では何かあったんじゃないだろうか、と少し不安になっていたところだった。
「おい、」
「ん?」
「外騒がしいぞ。帰ってきたんじゃないか?」
「ホント?!じゃ、早く行きましょ・・・――ッ!?」
バルフレアの手をとり、出口に向って歩き出したに突然悲劇が襲った―
丁度その時、討伐を終えその功績を自慢するべく意気揚々とヴァンがとバルフレアがいるテントの入口に手をかけた。
そのとたんにピタリと動きが止まった―
そして、その後ろについていたバッシュも同じように。
「―っバルフレ。。。アッ」
「っおい」
「私、、、」
「」
「・・・ダメなの、だから」
「落ち着けって」
「イヤ。。お願い・・ッ。もう耐えられない!!」
「・・お前―」
「喋らないで・・・ね・・・恥ずかしいから」
「―ああ」
「バルフレア・・早く、、、、して」
「分かったから少し体離せよ」
「・・・でも」
「大丈夫だ」
切羽詰ったようなの声と冷静なバルフレアの声が間違いなくこのテントから聞こえてくる。
その前で止まったままの二人を見つけたフランが静かに近づいていくと、
ヴァンはそれに驚きテントから手を離しそのまま後ろへ後ずさり突然走り出していってしまった。
首を傾げるフランがその場に立ち尽くすバッシュに目線を送っても返事は返ってきそうにも無かった。
「っあ!・・・バル」
「動くなって」
「だって、!、お願い、意地悪しないでッ」
「分かったからそのままじっとしてろ」
「・・・・―っん」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「、目開けろよ、もう大丈夫だ」
「本当?ありがとうバルフ――・・・!!?イヤァッ」
突然テントの入口が開放されそこから飛び出して来たのは目を潤ませた彼女の姿。
「バッシュ!!」
外に出たは最愛の人が目の前にいるのに気づきそのまま胸の中に飛びこむ。
後に続いて出てきたバルフレアは笑いを必死に堪えながら謝まろうと近づこうとするが、
は反対に遠ざかりバッシュの背に隠れてしまう。
「悪ふざけが過ぎるわ!!」
「悪かったって」
「また騙すつもりね」
「そんな言い方はないだろ。蜘蛛に襲われたのを助けんだぜ?」
「―!!」
「蜘蛛?」
「言わないでって言ったじゃない!」
「嫌いなものがあった方が可愛げがあるだろ、なぁ?」
バルフレアの目線にバッシュは顔を逸らし俯いてしまったまま何も喋ろうとしない。
どうしたのかとが覗くとバツの悪そうな表情を浮かべていて―
「誤解してたのよ。さっきまでいたヴァンもだけど」
傍観していたフランが代わってそう答えた。
「何を?」
「聞こえ方によっては逃げ出す人もいたわ」
「え?どうして」
「蜘蛛、って一言も言ってなかったでしょう?」
先に笑い出したバルフレアを見てテントの中での会話を思い起こしていくと確かに主となる言葉は言ってはいない。
それをふまえた上で、あの会話がテントの中で男女がしていてヴァンが逃げ出し、
バルフレアが笑い、バッシュが俯く状況に聞こえるとしたなら。。
つまり私とバルフレアが男女の関係だと思われた訳だ。。。
「バッシュ、、、、あなたまさか本当に??」
「いや誤解だ」
否定する彼の顔は徐々に赤みを帯びてきている。
「誤解も何も、そう思いましたって顔にかいてあるじゃない!」
「なっ・・」
「―知らないわッ!!!」
バッシュの肩を叩き哀れむように「マリリス討伐よりも大変だな」
そう言い残しバルフレアとフランはその場を後にする。
取り残された本人は大きなため息をつき頭を抱えていた。
「弁解の余地など・・・」
ある訳もなく―
その後――
半日ほど避けられていたバッシュだったが、
不憫に感じたバルフレアの計らいでどうにか二人きりで話すことが出来た。
「怒ってないわ、本当よ」
こんな言い方意地が悪いかもしれないけれど真剣なバッシュをみていると、無性にからかいたくなるのはどうしてか。
「そうは言うが、現状は何も変わっていない」
中途半端な私の答えに煮え切らなくて、きっとこのまま許す許さないと堂々巡りの
会話になるだろうと思い質問を変えてみることにした。
「誤解だったんでしょ?」
「ああ、そうでなければ困る」
「じゃあ、もし逆に本当だったらどうしたの?」
挑発的にチラリとバッシュに目線を送りクスクス笑いながら椅子から立ち上がった。
「もう皆のところに行かない?じゃないと私が悪者に―」
「」
「え?な、、何。ちょっと!バッシュ」
突然手を引っぱられ壁に押し付けられた体。
彼のブラウンの瞳からいつもの暖かさが無くなりその冷めたい眼差しが、瞬きすらぎこちなくさせる。
「冗談にしてはタチが悪いぞ」
「でもそう思ったのでしょ?」
「それは無いと思ったからこそあの場所に居られただけだ」
「そんなに信じてくれているの?」
「ああ」
「ならどうして顔が赤くなったの?意外とエッチなのね」
それを言われ当惑の表情を見せるバッシュに触れるか触れないかのキスを頬にして小さく微笑む。
「そういうところも好き。」
自分より年下の彼女に言われ恥ずかしさで名前を呼ぶのが精一杯なのに・・・。
「ねぇ、バッシュ」
疑われたのだからいいでしょ?、そう言うとはゆっくりと瞼をとじてゆく。
それに促されるように重ねた唇を仕返しとばかりに甘噛すれば、小さく漏れた彼女の声―